ぼくはこれまでに中小と大手の特許事務所(法律事務所)と大手メーカー知財部で働いた経験があります。
詳しくはこちらです。
・中小特許事務所(最初の特許事務所。出願業務を主に担当。) ・中小特許事務所(2か所めの特許事務所。ここで特許明細書の書き方を一通りマスター。) ・大手メーカー知財部(主に出願業務と他者特許の分析。出願業務には発明の発掘も含む。) ・大手法律事務所(出願業務を主軸とし、弁護士と協同して鑑定なども担当。今ここ。)
今回の記事を読むと以下のことを理解できます。
・知財部への転職が難しいかどうか ・知財部へ転職するためになにが重要なのか
目次
知財部への転職は難しいのか!?
結論からいうと知財部への転職は難しいです。
知財部への転職が難しい理由は以下のとおりです。
①そもそも募集が少ない ②知財部出身が優遇されやすい ③特許事務所でやることと知財部でやることは違う ④弁理士の資格があれば圧倒的有利というものでもない ⑤人間性が重視される ⑥30代未経験は厳しい
以下順番に解説していきます。
①そもそも募集が少ない
今は大手企業の場合には知財部員を拡充しようとする動きはなかなかないと思います。
知財部員を募集する場合は、だれかがぬけていそがしくなった場合です。
たとえば、知財部員が産休に入ったり、退職をしたりした場合です。
このような場合に、企業は知財部員を募集することがあります。
ただし、ほかの部門の社員を知財部へ異動して補充することもあります。
このため、知財部の中途採用の募集はなかなかなく、狭き門であるからというのが知財部への転職が難しい理由の1つです。
②知財部出身が優遇されやすい
知財部の中途採用の募集があっても、知財部出身の方が優遇されます。
これは、知財部が中途採用をするばあい、いそがしくて即戦力をもとめていることが多いからです。
また、会社は簡単にクビにできませんし、試用期間という制度ももうけないため、実力があるかどうかは知財部出身かどうかが判断材料となりえます。
このため、知財部出身でなければ、知財部への転職は狭き門であるということを知っておいた方がよいです。
③特許事務所でやることと知財部でやることは違う
特許事務所から知財部へ転職した人は多いですがそれでも難しいかなと思います。
というのも、特許事務所でやることと知財部でやることとは全然ちがうからです。
特許事務所では「どのように特許をとるか」すなわち特許をとれるための特許明細書の書き方を学びます。
このため特許事務所で働くと、特許明細書が書けるスキルが身につきますが、このスキルを知財部にアピールしても響かないところが多いです。
なぜなら知財部の仕事は特許明細書を書くという戦術的な仕事に重きをおいていないからです。
このため、知財部として働く場合にやることが一からスタートとなる場合が多いので特許事務所出身のかたにとっても難しいかなと思います。
一方、特許事務所で戦略的な実務をしていたり、企業への出向経験などがあれば強いと思います。
④弁理士の資格があれば圧倒的有利というものでもない
弁理士の資格をもつことは知財部の専門家と名乗れることですから、転職において有利となることはまちがいないです。
ただし、あくまでも知財部では実務経験>資格ですから引く手あまたということにならないので注意しましょう。
また、知財部の仕事は弁理士の資格がなくてもすませることが多いのでそこも弱いです。
いっぽう、特許事務所への転職の場合には弁理士はとても有利です。
⑤人間性が重視される
知財部は人間性が重視されます。
ここが特許事務所と違います。といっても人間性というのは性根の悪さとかそうではなく、コミュ力があるかどうかといったものです。
知財部は発明者と頻繁にコンタクトします。そのなかで、コミュニケーションがとれてなかったらうまくいきませんよね。
また上司・部下といった縦の関係もありますし人間性は重視です。チームプレーですから。
そうすると、人間性が弱いと思っている方は、知財部への転職は難しいかもです。
⑥30代未経験は厳しい
最後に年齢制限が厳しいです。
とくに、30代未経験では厳しいと思います。
知財部へ転職するならIT系・ベンチャー系がおすすめです
いまは大手企業の知財部は飽和状態にちかいので、大手企業の知財部への転職は狭き門です。
たとえば、大手材料系の知財部の求人があったとしても採用されるのはこんな感じです。
大手材料メーカAの知財部募集。➤大手材料メーカBの知財部出身者が採用(年齢30代の経験者) 中小材料メーカXの知財部募集。➤大手材料メーカYの知財部出身者が採用(年齢30代の経験者)
特許事務所出身者でも相性がよければうまくいけそうな感じはしますが、知財部・特許事務所出身者ではない人が大手企業知財部へ転職するのは難しいかなと思います。
しかも大手企業知財部へ転職しても分業化されている傾向にあったり、よそでも通用できるスキルをみにつけられることも少ないのであまりメリットもないかなと思います。
これに対し、IT系、ベンチャー系といった今後伸びてくる企業の場合には、知財部員を拡充する傾向にあります。
このため、大手知財部と比較して転職の難易度も低い傾向にあります。
しかもこのような企業であれば、幅広い業務に携わるチャンスもありますし、スキルもみにつきやすいです。
もし知財部への転職を考えているのであれば、IT系、ベンチャー系の知財部への転職をおすすめします。
また、こういうところで幅広く学んでいけば、経営コンサルタントとして独立することもできたり、ステップアップが見込めます。
知財部の求人の探し方
知財部の求人の探し方は3つあります。
①求人サイトを見て自分で応募
②転職エージェントに登録してエージェントに紹介
順番に説明します。
①求人サイトを見て自分で応募
特許事務所の求人サイトは、パテントサロンがあります。
ただし毎日1ヵ月くらい見ていたらわかりますが顔触れがいつも一緒ですので、もし優良案件を探すのなら転職サイト・エージェントに登録することをおすすめします。
②転職エージェントに登録してエージェントに紹介
転職エージェントに登録して、エージェントに希望条件を伝えて、希望条件に合致した求人をエージェントから紹介してもらえる方法があります。
希望条件の一例を紹介します。
・早くに手に職をつきたい➤指導が丁寧な事務所を紹介してもらう
・自由な時間がほしい➤残業時間が少なめの事務所を紹介してもらう
・高い年収がほしい➤高年収の事務所+年収交渉してもらう
仕事が忙しくて、転職をサポートしてほしい方におすすめです。
おすすめのエージェントはこちらの記事が参考になります。
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もし企業知財部だと難しいなと思ったら特許事務所へ転職することもありです。
特許事務所の中には、企業への駐在・出向できるところもあり、出向経験を積めば企業知財部へ転職しやすくなります。
特許事務所への失敗しない転職のやり方はこちらの記事で解説しています!
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以上