近年、司法試験の難易度が下がったと聞いたけど、実際どうなのか?
最近の合格率が高くなったと言われている理由は?
他の資格の難易度と比べるとどうだろう?
このような疑問にお答えしていきます。
最近は司法試験の難易度が易しくなり、合格率が上がったという話を聴きます。
実際に司法試験を合格するのは簡単になってきたのでしょうか?
司法試験は資格試験の中で最難関と言われていますが、本当に簡単になってきたのでしょうか?
結論からいうと、今でも合格率はとても低いです。
この記事を読むと、司法試験の今の難易度をよく理解でき、決して簡単な試験ではないことがわかります。
もしあなたが司法試験を受けてみようと考えているならば、まずは司法試験の難易度がどれくらいかをしっかりと理解しておくことが大切です。
ここで司法試験の難易度がどれくらいかを詳しくお伝えします。
目次
1.最近の司法試験の難易度
まず、そもそもの司法試験についてを簡単にご説明します。
①司法試験とは?
司法試験は、法務省の管轄の試験で、裁判官、検察官、弁護士の「法曹三者」と呼ばれる資格を与えてもらうための試験です。
この資格を与えてもらえるために法律に関する知識、応用する能力があるかどうかを問われます。
司法試験は年1回行われ、5年間に5回まで受けることができます。
司法試験の出題範囲は膨大で幅広い
司法試験の難易度が高いと言われてきた理由は試験科目が10科目あり、出題範囲される範囲が膨大であるということがあります。
司法試験に出題される10科目は、下の通りです。
○民法
○商法
○民事訴訟法
○憲法
○刑法
○刑事訴訟法
○行政法
○民事実務
○刑事実務
○選択科目
※選択科目は、専門的分野の選択できる科目ということで、知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法(公法系・私法系)、環境法のうちから1つを選びます。
環境法については、毎年度ごとに内容が違うものになります。
司法試験の詳細とスケジュール
司法試験には大きく分けて、短答式試験と論文試験の2種類あります。
例年5月の中旬に年1回行われます。
試験のスケジュールとしては、論文試験と短答式試験が同時に実施されます。
1日~3日目に論文試験、4日目に短答式試験が行われます。
ポイント
(例年の司法書士試験スケジュール)
・1日目(論文式):公法系2科目が2時間ずつ、選択科目が3時間で合計7時間
・2日目(論文式):民事系3科目が2時間ずつの合計6時間
・3日目: 中日
・4日目(論文式):刑事系2科目が2時間ずつの合計4時間
・5日目(短答式):憲法50分、民法75分、刑法50分の合計2時間55分
3日目に中日があるとしても、1日の試験が最長の日で7時間程度に及ぶため、その間ずっと集中して試験を受けられる集中力、体力、精神力が必要な試験になります。
司法試験の試験科目の詳細は下記の通りです。
○短答式試験科目
短答式試験の出題範囲は、憲法、民法、刑法の3科目がマークシート方式で出題されます。
憲法、民放、刑法の合計得点は175点です。
それぞれの配点は、
・憲法 50点(問題数20~25問程度)
・民法 75点(問題数30~40問程度)
・刑法 50点(問題数20~25問程度)
となります。
○論文試験科目
・憲法、行政法の公法系の科目
・民法、商法、民事訴訟法の民事系科目
・刑法や刑事訴訟法の刑事系科目の全7科目の中から出題されます。
配点はそれぞれの科目が100点ずつで、これに加えて選択科目の100点を含めて合計で800点になります。
※選択科目は、専門的分野の選択できる科目ということで、知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法(公法系・私法系)、環境法のうちから1つを選びます。
2.司法試験の受験資格
司法試験には受験するための資格が必要です。いきなり司法試験を受験することはできません。
つまり、司法試験前までに受験資格を得ておく必要があります。
司法試験の受験資格を得るための2通りのコース
司法試験の受験の資格を得るためには下の2通りのコースがあります。
○法科大学院を修了するコース
「法科大学院」とは裁判官、検事、弁護士の養成のために特別に設けられた、
プロフェッショナルスクールです。
2020年度現在、法科大学院は35校あり、原則として少人数制で教育を行う前提になっています。
法科大学院を修了して司法試験の受験資格を得るコースは、確実に司法試験の受験資格を得ることができます。
大学で法学部に進まなかった人や法律とは無縁の仕事をしていた社会人でも、法科大学院に入学して法曹三者(裁判官、検事、弁護士)を目指すことができるように、「未修コース」と「既修コース」の2つのコースが設けてあります。
「既修コース」は法科大学院に入学前に大学の法学部で法律科目を修了している人を向けたコースになります。
法科大学院の既修コースに進んだ場合でも、最低2年は司法試験の受験資格を得るまでにかかります。
法学未修コースとは法学部などで法律関係の単位をとっていない方が進むコースになります。法科大学院で法学未修コースに進んだ場合、少なくても司法試験を受験するまでに3年以上はかかってしまいます。
しかも働きながら、司法試験の受験資格を取ろうとお考えの方にとって法科大学院に通うのは、かなり厳しいようです。費用も1年間で150万円程度はかかります。
大学の法学部に通うと、4年間で500万円はかかります。
○司法試験の予備試験を受験するコース
一方、法科大学院に入学せずに司法試験の受験資格を得たいと考えている方なら誰でも司法試験の受験資格を取れるのが司法試験の予備試験を受験するというコースです。
司法試験予備試験というのは、「法科大学院修了程度の知識・能力があるかを判定するための試験」ことです。司法試験の予備試験は2011年から開始されました。
この予備試験を受験して合格すれば、社会人でも誰でも法科大学院に通わなくても司法試験の予備試験を受験できるというメリットがあり、うまくいけば1年で司法試験を受験する資格を得られます。
法科大学院を修了するまで2~3年をかけて司法試験の受験資格を獲得して司法試験を受験しても 実際にその半数近くの人が司法試験を突破できていません。
その一方で、予備試験に合格したコースで司法試験を受けた方の方が高い合格率を出しているという事実があります。
予備試験に合格した人のうち、司法試験した合格率は下記の通りです。
注意ポイント
このように予備試験をクリアして受験資格を得て司法試験に合格した人の合格率は、年々増加しており、令和3年度の司法試験においての合格率は 93.5%の合格率でした。
その理由としては、予備試験に試験科目と司法試験の試験科目はほとんどが重複しているからです。
つまり、司法試験の予備試験は例年11月に行われますので、予備試験に合格したら、翌年5月に行われる司法試験に合格できる可能性はかなりたかいということになります。
一方、これに対して法科大学院の修了者の方の合格率は、最も高い毎年合格率を出している愛知大学法科大学院でも66.7%という結果でした。
ただし、やはり司法試験受験資格を得るための予備試験の合格率自体が狭き門で合格率は、わずかに4%です。
司法試験を受ける資格を獲得するためにまず、難関である予備試験で短答式試験、論文試験、口述式試験の全ての試験に合格する必要があります。
予備試験の短答式試験の合格率は約20%ですので、80%の受験者がここで落とされ、論文試験には進めないというのが現状です。
まずは、予備試験をクリアするために膨大な試験範囲を自分で勉強し、知識を修得するためにかなりのモチベーションとスケジュールを自分で管理できる能力が必要になります。
司法試験受験資格は永久にあるものではない!!
特に注意が必要な点は、法科大学院の修了した後に得た受験資格も、予備試験に合格し得た受験資格も永久にあるわけではない点です。
法科大学院の修了後、または予備試験に合格した後、5年経つと司法試験受験資格は失効してしまいます。
そのため、司法試験の受験資格を得たら5年以内に5回の受験の間に合格する必要がありますので、この点をしっかり覚えておきましょう。
3.最終的な司法試験の合格率はどれくらい?
近年、政府は法曹三者(裁判官、検事、弁護士)を増やすことを目的として新司法試験を開始しました。
その結果、近年の司法試験の合格率は上がり続けており、毎年30~40%程度の合格者が出てきています。
旧制度の司法試験での合格率は、約10%程度だったことを思うと、近年の合格率はその3~4倍になり、合格率がかなり上がっていることがわかります。
4.司法試験の難易度がやさしくなったと言われる本当の理由は?
司法試験の合格点も下がってきており、1575点満点中、800点を切っても合格できるケースが令和2~3年で連続しています。
実際に令和3年度実施の司法試験の受験者数は、3,424人で、そのうち合格者は1,421人。
合格率は41.5%でした。
(下のデータはhttps://www.shikaku-square.com/media/shihoshiken/ より出典)
確かに出題範囲の科目が多く、1つ1つの問題も難易度が高いのですが、今では「約5割程度の得点で合格できる試験」と言われています。
司法試験の難易度と他の資格の難易度比較
ここまで合格率が上がってきているのを見て、「司法試験は難関のわりに合格率が高くなって簡単に合格できるのではないか?」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、前述したように、そもそも予備試験に合格してはじめて司法試験の受験できる資格を得るという厳しいハードルが設けられているため、総合的に見たら合格率が高いとは言えないのです。
やはり依然として司法試験の難易度は高く、合格率は他の資格試験の合格率よりもはるかに低いということになります。
ちなみに類似する法律関係の士業の資格試験と比較してみると、行政書士の合格率は8~15%、司法書士の合格率が3~4%となっています。
○司法試験と他の資格試験の偏差値比較
法律関係の他の国家資格試験の中でも最も難易度が高く、偏差値は75~7程度と言われます。
一般的に難易度が高い法律関係の国家資格試験の偏差値で比べると、近い偏差値の資格試験が税理士・公認会計士の72、司法書士試験の67があります。
78 | 司法試験 |
77 | 司法試験の予備試験 |
70 | 公認会計士 |
69 | 不動産鑑定士 |
68 | 弁理士 |
67 | 司法書士 |
66 | 税理士 |
60 | 土地家屋調査士/一級建築士 |
59 | 中小企業診断士 |
57 | 社会保険労務士/測量士 |
56 | 行政書士/二級建築士/測量士補 |
55 | マンション管理士 |
54 | 宅建士 |
税理士も公認会計士も合格するために何年も勉強し続ける必要がある難易度が高い資格として知られていますが、司法試験は今でもそれ以上に難易度が高い資格試験であるということになります。
5.司法試験は、独学で合格することが可能か?
司法試験に合格するには10科目の膨大な幅広い法律科目の勉強だけでなく、論文試験で自分が修得した知識や考えを論理的にまとめ、文章でわかりやすく展開するための勉強もしなければなりません。
司法試験に合格するために難しい問題を解くためには多くの過去問を解き、論文試験対策としてもできるだけ多くの論文を書いて練習をし、添削指導してもらう必要があります。
実は、論文試験こそ、予備試験に合格するための最大の山場なのです。そのため、論文試験を突破することに全力で立ち向かうには独学では難しいです。
1~2年で合格する人の割合はかなり少ないため、3年以上の長期間、勉強し続ける気力、体力、集中力や時間管理できる能力が必要です。
そう考えると、独学での勉強はかなり困難だと言えるでしょう。
何より長時間勉強を続けていくためのモチベーションを保つのが難しいですし、独学では客観的な観点から論文試験の添削指導を受けられないため、自分の論文の内容が良いのか悪いのかもわかりません。
そのため、できるだけ確実に効率的に司法試験に合格するために、予備校や通信講座を活用することをおすすめします。
司法試験の通信講座のおすすめはこちらの記事で解説しています。
6. 司法試験の難易度まとめ
以上、司法試験の合格率が年々上昇していることをお伝えしてきました。
近年の司法試験の合格率は高くなってきたとはいえ、法科大学院を修了するコースを選ばない人が司法試験にチャレンジするには試験を受験する前段階として司法試験の受験資格を獲得するため予備試験に合格することが不可欠になります。
この予備試験に合格しても、全ての人が合格するわけでなく、合格率は30~40%程度だと考えると司法試験はまだまだ簡単に独学で勉強して受かるような試験ではないといえます。
そのため、できるだけ確実に効率的に司法試験に合格するために、予備校や通信講座を活用することをおすすめします。
-
2023年最新】予備試験・司法試験通信講座のおすすめと比較は?失敗しない選び方も解説
続きを見る